SS「VOCALOID」メリークリスマス

今日は12/25。世間はクリスマス。

俺はボーカロイドをみていた。

ずっと前から売れ残っているボーカロイド。
他のボーカロイドは売れていったけど、このボーカロイドだけは残っている。

電源の入ってないこの娘は、何をみているのだろうか。

鏡音リン・・・

ここに残っているのは前のバージョン(Act1)で、扱いずらいためか
買うものも少なく、次のバージョンがでたためにさらに売れなくなり
店の隅にひっそりと並べられている。

店主にいって、起動してもらう。

リンの瞳に光が宿る。しかし、その表情は暗い。

幾人がこうやって起動したあと、リンの歌を聴いて扱えないと
判断して去っていたのか。

「ふぅ・・・」軽くため息をついたあと

歌を歌った。

リンがこちらを不思議そうに見ている。

歌い終えたあと、リンに感想を聞いてみる。
けれど、リンは返答に困ったように黙っている。

当然だ。

俺は、かなりの音痴でとても聴いていられないほどだ。

「俺はこのとおり音痴だ。音楽センスもない。
 だからお前をうまく歌わせることなんてできない」
リンにそういうとますますリンの表情が暗くなる。

リンは、俯いて呟く。
「私はちゃんと歌がうたえないし、旧式だし、、、、
 みんな私の歌を聴いて去っていく。」

「確かにそうだうな」とつぶやくと、ビクッとリンが体を震わせた。

「だけど、俺はお前が一生懸命に歌っているのを知ってる。
 それにお前の声が好きなんだ。」

お前と一緒にへたでもいいから楽しく歌いたいんだ。

リンは俺をじっとみて、「本当にいいの?」と聞いてくる。

「もう一度言う。俺はお前をうまく歌わせてあげることはできない。
 そんな俺でもマスターと呼んでくれるか?」

リンは小さく「マスター」と答える。

「ありがとう、リン
 そして、これからよろしくな」
そういって、リンの頭を撫でる。

「はい、よろしくお願いします」と、笑顔でリンは答えてくれた。

「それと・・・
 今までお前を迎えにくる勇気がでなくてごめんな」

メリークリスマス。
聖なる夜に素敵な出会いがありますように。

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